初恋は海に還らない



 頭一個分以上違う身長で見下ろされ、ビクビクする私を洸は振り返る。



「都、今日の客、一人目午前からだけど……その間帰って何すんだ?」
「いつも通り本を読む」
「たまにはお前、ここ以外の場所に行ってこいよ」
「へ」
「理玖、コイツ遊び連れてってやれ」
「はい?」



 私がギョッと目を大きくし、洸のシャツを後ろから思い切り引っ張ったが知らないふりをされた。


 いや、待ってよく考えて。絶対この理玖って人も怠そうな雰囲気だし、断るはず──。



「分かった」
「分かったの!?」
「うわ声デカ」
「ははは」



 思わず突っ込んだ私に、洸はカラカラと楽しそうに笑っていた。そして、ひそひそと私の耳元で呟く。



「安心しろ。理玖はいい奴だから」




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