初恋は海に還らない




「自転車、いつも乗せてくれてありがとう。楽しかった」
「は? まぁ、また乗せてやってもいーよ」
「あと、今度うちに遊び来れば? 向こう案内するし」
「それは絶対行く。無かったことにするなよ」
「しないってば」
「……都、また来いよ」



 理玖が私の背中をぽんと叩く。その表情は見間違えでなければ寂しそうなものだった。そして理玖は乗って来た自転車に跨り、ひらりと手を振る。



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