初恋は海に還らない



「じゃあ、俺はこの後海の家の手伝いあるから。またな」
「は? お前最後まで都を見送らねぇのかよ」
「若者はSNSで頻繁にやり取りするからいいんだよ。じゃーな、都」
「うん、またね理玖」



 理玖は坂道を勢いよく下って行った。私と洸はその背中を見送る。


 多分理玖は私と洸を二人きりにしてくれたんだ。正直ありがたい。


 私は洸の顔を見上げる。相変わらず見た目は厳つくて怖い。



「洸、私が帰ったら寂しいんじゃない?」
「確かに寂しいな。都を海に投げるの楽しかったのに」
「いや、そんな理由なの?」
「うそうそ、冗談だよ。寂しくなるな」



 洸は私の髪の毛をぐしゃぐしゃと撫でる。この手のひらの温かさを、感触を、きっと忘れることはないだろう。



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