初恋は海に還らない




「都、お前学校どうするんだ」
「辞めて定時制に行くことにした」
「おー、思い切ったな。いい決断だと思う」
「もうあそこに居る人間から自分がどう見えてるかなんてどうでもいい。新しい場所で頑張る」
「その粋だ」
「……洸が私の背中を押してくれなきゃ、こんな決断できなかったよ」



 洸が居なければ、きっと私は両親に本当のことを話せなかったと思う。


 学校を辞める決断をした私を、両親は肯定し、そして、直接学校に掛け合いイジメの問題を浮き彫りにしてくれた。


 自分一人ではここまで状況を動かすことはできなかったはずだ。


 風が海の匂いを運んでくる。私は、深く深く深呼吸をした。



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