優しい死神

「雪にぃ!雪にぃ!起きてよ!」
「撫…子?」
「お、起きたぁ…」
「な、何でここに!?」
撫子は薔薇童子様の屋敷にいるんじゃ…
「なんか呼ばれたような気がした。ねぇ、そこにいるの水にぃさんじゃない?」
「あ…水!なんでお前起き上がって…」
「そんなのこっちのセリフだ雪。なんでお前鬼になってるんだ。しかもこの術…」
「俺たちの残り時間は30分だ。30分経ったら俺たちは死ぬ。」
「え…なんで!?しかも俺たちって…」
「水は陰陽師だからさ…もしかしたら風鈴童子様の敵に…なるかもしれないじゃんか。」
「雪にぃのばか!だからって自分まで…」
「あっ…紅…い、行かなきゃ…」
「紅姉さんもなの!?」
「お前は…付いてくんな。水のそば…に」
「い、嫌だ。いく!」
はぁ…早くしないと…紅が…紅だけでも…
「紅なら俺の先輩と戦闘…いいや死んでんじゃねぇか?しっかし紅も鬼になってるのかよ。」
「そんな話してる場合じゃないんだよ!!早くしないと…風鈴童子様の右腕が…」
「なんでそんなに…」
「うるっさい!!」
俺は水に刺された傷を無視して走りだす。必ず…紅を救うために。
 紅がいたのは川のそばだった。もう少しで敵に刺されそうになっているのを見て俺は速度を上げる…
「やめろぉぉぉぉぉぉ!!!!!」
最後の最後の力を振り絞り前に太刀を受けると前の相手は驚き
「く、くっそ。木槿失敗したか。」
そういって逃げ出した相手を見て俺は倒れる。よ、良かった…
「もう!ばか、雪!なんてことを…」
「よ、良かった…紅、師匠のこと頼んだぞ…」
「雪気づいて…ううん、そんな事より血が!?」
「当たり前だろ…あんなにも似てる人が…いるわけねぇよ。」
「は、話さないで!」
「雪にぃ!」
「あぁもう水は…?」
「水にぃは…死んだよ。」
「そっか。じゃあ俺もそろそろかな…」
俺を救ってくれた風鈴童子様。彼は俺の憧れの日向師匠だった。それを知ってものすごく嬉しかった。生きてたんだって、歓喜した。そこから俺は彼に忠誠を誓い役に立てるように頑張った。上手く補佐をできたのかなんてわからない。でも…精一杯やった。本当はもっとそばに居たかった…。
「なぁ紅。俺は…師匠の役に立てたかな?」
「あったり前でしょ!」
「そっ…か。よかっ…た。」
どんどん真っ暗になる視界…あぁ終わりか…もっと役に立ちたかったな。
「雪にぃぃぃぃぃ。」
そんなに泣くなよ…バカ撫子。俺は彼女の頭を撫でようと思ったが力が入らず落ちる。そして目もどんどん落ちていく中こんな声が聞こえた…
「雪にぃ大好き。守ってくれてありがとう。」
あぁ良かった。撫子だけでも守れたんだ…だって、俺が日向師匠がいなくなる時に伝えたのは…
『はいっ!撫子や藤華を守ります!!』
 ~撫子side~
 雪にぃが亡くなった事件から数年がたった。私は今大江山の都で物語を語る人となっている。薔薇様の手伝いとかはダメって言われて私は今雪にぃが残した屋敷に闇さんと一緒に住んでいて暇になると私は都に出て子供たちにお話を聞かせてあげている。もちろんそのお話は雪にぃのお話だ。ずっとずっとこのお話を伝えて子供たちに自慢する。こんなにも素敵な人がいたんだよって。ねぇ雪にぃ。私はねあなたを好きになれてよかった。まだあなたのほうには行けないけどまた会ったらたくさんのお話をしてあげる。だから…
「撫子様~!風鈴童子様と薔薇童子様がお呼びです!」
「わかった、今行くわ。」
私は振り向いて闇のほうへ行こうとすると私の着物の袖を引っ張る小さな手。その子は鬼の子で私のほうを向きこう聞いた
「このお話の題名ってなんていうの?」
「あぁそうねぇ…」
決めてなかったな。そんなことを聞く人がいないのもあるけど…あぁぴったりのがある。これにしましょう。
「題名はね『優しい死神さん』よ。」
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