片恋リグレットに終止符を.
俺の中学時代から別の話へ。それからまた他の話題へと移り変わりながら、飲み会も終盤になっていく。
結局、菜々と何も話せていないし、心はもやもやしたままだった。
「明瀬さんはどうやって帰んの? なんなら俺らで送ろうか?」
「いえ、私は迎えが来るので」
「迎え?」
「…あ、」
ちらほらとメンバーが解散していくなかで、店に入ってきたある男に菜々の目線が移る。
「菜々、おまたせ」
「紘(ひろ)くん」
「ごめん、ちょっと遅くなった」
「大丈夫だよ」
嬉しそうに顔を綻ばせる、さっきまで見せていた笑顔とは違う。
その様子はどこからどう見ても
「なにー、もしかして彼氏?」
「…はい」
先輩がニヤニヤしてそう聞いて、照れくさそうに菜々がうなずいた瞬間、俺の心に重たい石が乗っかった気がしたのはなんなんだろう。
小走りで駆け寄る小さな手をためらいなく握る隣の男の行動は、俺にはできなかったもので。
文句を言う資格なんかないくせに、繋がれた手から目が逸らせないのは、なんなんだろう。