片恋リグレットに終止符を.
菜々が前を向いている間に、俺は何をしてたんだろう。
あの日から俺には、ずっと。
心のなかに傷つけてしまった菜々がいた。
あの日から菜々には、もう。
心のなかに傷つけた俺はいなかった。
「私もね、好きだったよ、碓氷くんが」
「っ」
最後まで確信が持てなかった菜々の気持ち。
今更わかっても、もう遅い。
好きなのは過去か今か、それすらも曖昧な境界線で勝手に揺れ動いて。
だけど、もう手を伸ばすこともできない。
だって、今の菜々の隣は俺じゃないんだから。
「あの頃、両想いだったんだね。びっくりだよ、ふふ」
無邪気に笑える菜々は、とっくに乗り越えて俺なんか捨て去ったんだろう。
俺だけが踏み出せないまま、今も思い出の中にいる。
「…彼氏、できたんだな」
「うん」
「どんな人?」
「え? んー、…こっちが恥ずかしくなるくらいストレートに気持ち伝えてきて、ちょっとドジだし抜けてるけど、………大好きな人」
「…そうか」
俺には言えなかった好きを、素直に言える男。
完敗だと、思った。