妖怪の妻になりました
三章
 夜、帰ってきた青行燈さんは少々疲れた顔をしていた。まあ行き違って待ちぼうけなんてしていたら、人でなくてもがっくり来てしまうだろう。

 そんな折、烏天狗さんと九尾さんが訪ねてきたと話したら、さらに肩を落としてしまった。なんというか、私は何もしていないはずなのに申し訳ない。

 注いだお酒を飲んでようやく落ち着いてきた様子の彼に、この話を切り出すには勇気がいるけれど。だからといって後回しにしても始まらない。

「青行燈さん」
「ン」
「あの」

 遠慮しつつも隣に座れば、お猪口を軽く傾けた彼が優しい面持ちでこちらを見る。隣をとんとんと叩く青行燈さんの仕草に甘えて、もう一歩分密着した。

「どうした?」
「こ……こどもは欲しくない?」
「っ!? ゴホッ」

 その瞬間、青行燈さんが激しくむせた。変なところにお酒が入ったら大変だ。

 人と同じような体をしていることをついさっき知ったばかりだから、余計に心配してしまう。

「ご、ごめんなさい」

 慌てて背中をさすると、彼が緩く頭を振った。青く光る角が薄く残像を残す。

「いや……ど、どうしたと言うんだお嬢ちゃん」
「いえ、あの。その、早く作った方がいいって、烏天狗さんたちが」
「……あいつ、余計なことを」

 ぼそりと、聞いたことの無いような低い声で青行燈さんが言った。鋭く細められた目に、思わず身動ぎしてしまう。こんな顔もできるんだ。
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