妖怪の妻になりました
「あの、何か」

 そう問えば、私の方に向き直った彼はくるりと表情を変えた。キリッとした眉が柔らかく下げられている。よかった、いつもの彼だ。

 そのまま、説き伏せるように私の肩に手が置かれる。

「いやいやなんでもないんだ、お嬢ちゃん……そうだな、子供ってのは授かりもので」
「じゃあ、しない?」
「えっ」
「そういう、こと……」

 上目遣いで彼の袖をそっと引くと、あからさまに彼は動揺して見せた。その朱色の頬は、きっとお酒のせいではないだろう。少しあざとかったかもしれない。

「んんっ」
「あぁ! 平気?」

 彼が口元を袖口で抑えた。

 またむせてしまってはと思い背中に手を添えると、青行燈さんは今度こそしっかり首を横に振る。

「いや、すまない取り乱した。まさか君の口からそんな……」
「駄目……?」
「いいや、駄目な訳があるか。俺は君を心から思って(めと)ったんだ、その……子だっていずれは成したいさ」

 そういって、口説くように手を取られる。

 甘い言葉に思わず胸がきゅんと締まった。こういうところが好きだ。
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