幼なじみマリアージュ~偽装のはずが、エリートパイロットの溺愛が開始されました~
「で、どうする?草壁」


水瀬先輩はもう一度俺に訊いて来た。
「俺がやります」

「それでこそ草壁だ」

水瀬先輩は俺に笑みを浮かべた。

副操縦士は機長の補佐役だと思っていた。でも、実際の業務においては明確に役割分担がされていた。
機長である水瀬先輩が最終的な責任者ではあるが、お互いの役割に対しての責任の重さは同じ。
こうして、俺を信頼して、こうして経験を率先して積ませてくれる水瀬先輩。

俺は水瀬先輩のおかげで副操縦士として経験を確実に積み上げていた。

着陸角度は3度と言うのが鉄則だけど、新ルートからの着陸方法は3,45度。

テスト飛行の際、外資系の航空会社のパイロットはその着陸角度に対して危険性を感じ、羽田から成田へ着陸の空港を変更した。その危険性を認識しながらも、政府は強行した。全てはインバウンド特需の為、二年後開催される東京五輪の為に。
実際、新ルートでの運航が始まった。出来ないコトはない。幾度かの運航でそれが世に証明された。でも、水瀬先輩や他のパイロットたちは内心は危険だと心の中では感じていた。

そして、着陸態勢に入る。
操縦桿を握る俺の手に汗が滲む。

全ての乗客、結を始めとする乗務員たち、そして隣で見守る水瀬先輩。
皆の旅の無事が俺の手に掛かっていた。
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