幼なじみマリアージュ~偽装のはずが、エリートパイロットの溺愛が開始されました~
「…草壁さん」

坂上チーフがギャレーの中に入って来た。

「近藤さんが体調不良を訴えています。東亜の槇村先生が搭乗されているので、診察頼んで欲しいの」
「あ、はい…分かりました」

ひと昔なら、機内で傷病人などが発生した場合はドクターコールをしていた。
でも、「医師登録制度」が導入されてからは機内でのドクターコールはなくなった。

由夢さんの親戚だけどお目にかかるのは初めてだった。東亜では有名なやり手の若手産科医らしい。
茶髪で童顔のイケメンで目立った風貌だし、直ぐに分かった。

「槇村先生」

彼は耳にイヤホンをして熟睡していた。
呼んでいるのに全く起きる気配がない。

私は不躾かもしれないが緊急を要するので、彼のイヤホンを片方外して耳許で名前を呼んだ。

「槇村先生!」

「えっ!?あ…えっ!?CAさん…どうしたの?」

彼は慌てて目を開けた。

「申し訳ありません…御気分が悪い…」

「あ…分かった…診察だね…」

槇村先生は私が説明する前にシートを立った。

「気圧の変化で気分が悪くなったのかな?CAさん、俺は彼女の元に行くから…ドクターズキットお願いします」

「はい」

< 154 / 196 >

この作品をシェア

pagetop