社長さんの溺愛は、可愛いパン屋さんのチョココロネのお味⁉︎
「リスの親子の看板が下手可愛(ヘタカワ)な絵で印象的じゃったんは覚えちょる」

 思わず頭に浮かんだままを口にしたら、すぐ横から「それ、うちが描いたん……」とくるみがポツンとつぶやいた。

 そのしょぼんとした声音に、実篤は内心(ひーっ、失言じゃったぁ!)とオロオロしまくり。

「あっ、ほ、ほらっ、あれよっ! おっ、俺みたいなぼんやりした奴でもすんごい印象に残っちょるんじゃけぇ! それってとても(ぶっ)すごい事じゃと思わん?」

 慌てて取り繕った実篤(さねあつ)に、鏡花(きょうか)が冷たく「お兄ちゃんサイテー」と言い放って。
 八雲(やくも)も「うんうん」とうなずく。

 くるみのことが愛しくて堪らない実篤としては不本意もはなはだしい由々(ゆゆ)しき事態だ。


「そっかそっか〜。あの絵描いたんはくるみちゃんじゃったんかぁ〜。あれ、いつも馬場のおばあちゃんが『可愛いかろ?』って自慢しよったよ」

 なのに場の空気を読んでいるのかいないのか。

 父・連史郎(れんしろう)がのほほんとした声音で、割って入ってきて。

 一様に皆の動きを止めてしまった。

 どうやら「馬場」というのがくるみの祖母の苗字らしい。
木下(きのした)さんじゃないっちゅーことは、母方の祖母っちゅーことじゃろうか)
 と思ったりした実篤だ。
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