社長さんの溺愛は、可愛いパン屋さんのチョココロネのお味⁉︎
9.ホワイトデーと…
　岩国市横山にある吉香公園(きっこうこうえん)の梅の花が咲き乱れる三月の初旬頃。

　くるみと一緒に園内を歩きながら、実篤(さねあつ)はソワソワと落ち付かない。

　公園周辺には 原種に近い丈夫な系統で、葉がやや小形で枝つきが細い「野梅系(やばいけい)」。
　野梅系から変化したもので、枝や幹の内部が紅く、花は紅色・緋色のものがほとんどの 「緋梅系(ひばいけい)」――これには花が白くても、枝の髄が紅いものも含まれる――。
　梅と杏(あんず)との雑種で、葉は大きく育ちの良いものが多い「豊後系(ぶんごけい)」――杏(あんず)に近く、花は桃色のものが多い――の三系統の梅が植えられており、計二百本余りの梅たちが、少しずつ時期をずらして訪れる人々の目を楽しませてくれる。

「梅の花、凄く(ぶち)綺麗ですね」

　横を歩くくるみにそう声を掛けられて、実篤は「そうじゃね」と答えながらも、内心（くるみちゃんの方が綺麗じゃけぇね!?）と思わずにはいられない。

　今日のくるみは白のハイネックセーターに、からし色のタータンチェック柄のジャンパースカートを重ねている。
　大きく開いたＶネックの胸元と、綺麗なＡラインを描くロング丈のフレアシルエットがとても女性らしい。
　寒さをしのぐため、その上に羽織った白のふわふわもこもこのファージャケットが、どことなく白ウサギを連想させて、思わずギュッと抱き締めたくなる可愛さだった。


「――……ですね」

　彼女の愛らしさに見惚れている内に、くるみから何か話し掛けられていたらしい。
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