社長さんの溺愛は、可愛いパン屋さんのチョココロネのお味⁉︎
12-3.キミの大事なモノを守りたい
 くるみと、御庄(みしょう)にあるくるみの家で暮らすようになって早三ヶ月。
 二人での暮らしにも大分慣れてきた実篤(さねあつ)とくるみだ。


 基本くるみの朝はとても早い。
 三時には起きて、厨房でパン作りに精を出している感じ。
 『くるみの木』のパンは手こねなので機械でこねるパン屋よりも手間がかかる。
 生地自体は前の日にこねて寝かせているし、中に入れるカスタードクリームや総菜パンの具材などもあらかじめ前日の昼間に作ってある。
 だが成形と焼き上げは基本起きてからになるから、一人で作業しているくるみが一日に作れるのは二百個がギリギリライン。

 ちなみに『くるみの木』で売られているパンは、殆どがそのまま食べても大丈夫なパンばかりだ。

 十時から十二時を目処にあちこち動き回る移動販売のお店で、パンを買ってくれたお客さんらがそのままその日の昼食にすることが多いからなのだが、そんな中にあって、一日五(きん)しか焼けない小さめの食パンはそれなりに人気がある商品だ。
 とは言えそれらはほぼ予約品で、ある意味受注生産みたいになっている。

 こういう基本的なライフスタイルは一緒に暮らすようになったからと言って変わらない――いや、変えられない――から、必然的に実篤もくるみと一緒に夜は早めに休む習慣がついた。

 さすがにくるみと一緒に三時から起きるようなことはないけれど、五時には目覚めて掃除や洗濯など、自分が出来ることはくるみに代わって済ませるようにしている。

 一緒に暮らすようになったら毎晩のように営めるかと思っていた夫婦生活も、くるみの睡眠時間を考えるとそうも言っていられなくて……。

 実篤はグッと我慢してそれこそ休みの前日や、休日にはたっぷりじっくり抱かせてもらうことで何とか折り合いを付けている。
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