社長さんの溺愛は、可愛いパン屋さんのチョココロネのお味⁉︎
 実篤(さねあつ)に肩を抱かれてパントリーに入ったくるみは、人感センサーでパッと明るくなった室内のまぶしさに、一瞬だけ目を(すが)めた。

 そうして。

「――ねえ、くるみ。ここの柱に見覚えない?」

 目が慣れたと同時に投げかけられた実篤からの言葉に、指さされた作り付け棚の支柱を見て、くるみは瞳を見開いた。

「実篤さん……これ!」

 つぶやくなり実篤にギュッと抱き付くと、
「台所にあった、うちの成長記録がついた柱……」
 言って、我慢出来なくなってポロリと涙をこぼした。

「うん。この柱だけは綺麗に(あろ)うてから消毒しもろうてね、なるべく表面を削り取らんようにして使(つこ)うてもろうたんよ。字ぃやら残すん、上手(うも)ぉいくか自信がなかったけんくるみちゃんには内緒にして作業を進めてもろうたんじゃけど……思ったより綺麗に書き込みが残せたけん、正直俺もホッとした」

 実篤が優しくくるみの頭を撫でながら「言うん、遅うなってごめんね」と説明してくれるのを、くるみはほろほろと涙を落としながらただただ小さくうなずきながら聞いた。

 リビングのローチェストに実家の廃材を利用すると聞かされた時ももちろん嬉しかったけれど。

 亡き両親が自分の成長を喜びながら刻んでくれたこの柱の成長記録に勝るものはないと、くるみは思って。

 自分が大切に思っていたものを、実篤がくるみと同じぐらい――いやもしかするとそれ以上に――大切にしてくれたことが嬉しくてたまらなかった。
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