社長さんの溺愛は、可愛いパン屋さんのチョココロネのお味⁉︎
「――あ。今更なんですけど……先程は助けて頂いて本当に有難うございました。私、『くるみの木』の木下(きのした)くるみです」

 言って、ニコッと微笑まれて。


「あ、栗野(くりの)実篤(さねあつ)です」

 と淡々と答えながらも、頭の中は

(ちょっ、木下(きのした)さん! 可愛すぎて困る(やれんの)んじゃけどっ!)

 とか。

 年甲斐もなく、自分より随分年下に見える女の子にハートをわしづかみにされて、パニック真っ最中の実篤(さねあつ)だ。

 確かにトラブルに巻き込まれていたくるみを見た瞬間、電気に打たれたように勝手に身体が動いてしまったのは自覚している。
 それが、運営側だから、ではなく彼女のことを憎からず思ったからだというのも長年の経験からピンときた。

 だが、それにしたって――。

(一目惚れとかするような歳じゃないじゃろ、俺!)

 と、思ったのも事実だ。
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