社長さんの溺愛は、可愛いパン屋さんのチョココロネのお味⁉︎
「もっ、もちろん、そのつもりじゃけど……もしもに備えて、ね?」

 今すぐにでもすぐそばのくるみをギュッと抱きしめたくなって、「こんな外ではまずいじゃろ、俺!」と理性を働かせた結果、挙動不審に視線を泳がせてしまった実篤(さねあつ)だ。

「分かりました」

 言ってから、「あーん、ほいじゃけどやっぱり!(それでもやっぱり)」とくるみがつぶやく。

「こっから実篤さんの家までって三十分以上も掛かるんですね。別々に行くん、何か寂しゅうなりました」

 実篤の家は由宇町(ゆうまち)にある。
 市町村合併で岩国市に組み込まれた町なので、結構距離があるのだ。

 目的地に実篤の家を指定した瞬間、ナビが「目的地まではおよそ二十キロメートルで、四十分くらいかかります」と告げたことが不満らしい。

「ほいじゃあ車、そのままにして俺のに乗る?」

 明日はどうせ『クリノ不動産』自体休みなのだ。
 このままくるみの車が停めてあったからと言って支障はない。

 ないのだけれど――。
< 92 / 419 >

この作品をシェア

pagetop