eスポーツ!!~恋人も友達もいないぼっちな私と、プロゲーマーで有名配信者の彼~
身を乗り出すようにしてヤマトは私に質問をしてくる。


「ストロベリーってどっちかというと弱キャラ扱いされることが多いじゃないですか? 中距離がメインになってクセがある。どうしても近接キャラには押され気味だし、技の出だしも遅めだから攻め込まれるとキツイ。かといって遠距離系のキャラに逃げられると、追いつけない。なのに、ハルさんのストロベリーにはその感じが全く見えなくて――」


「ヤマト、お前そんなに早口で言ってもハルさん困るだろ」

ソウマさんがヤマトの頭を小突くと、ヤマトは「ごめん……」と小さな声で言った。

大きい体のヤマトがなぜか少し小さく見える。

「とりあえず、注文しましょうか?」

カフェのメニュー表をヤマトが見えやすいように広げる。

「あ、ありがとう……!」

ライブ配信では絶対に見られない表情が見れて、胸の奥がきゅんとなる。

ソウマさんはそれをみてニヤついていた。

「僕はコーヒー」

「お、俺も」

「私はアイスココアで」

「――ココアってかわいすぎ……!」

「ん? ヤマトさんもココアですか?」

「いや、コーヒーです!」

ヤマトはぶんぶんと頭を振る。
いつもはたくさんのファンの前で堂々と配信しているのに、不思議。

私もすごく緊張していたのに、ヤマトが私より緊張しているので逆に落ち着いてきてしまった。

「すいません、注文いいですか?」

私は手を挙げ、店員さんを呼んで注文をした。

ヤマトはどうしていいのかわからないのか、次は無言になっている。

ソウマさんは鼻歌混じりにスマホを触っていた。

「マンダム、打ち合わせ終わったって。時間見て家行こう」

「マンダムさんって社会人だったんですね」

マンダムさんも、アタックウォリアーズをプレイしているゲーム実況者だ。

ヤマトやソウマさんほどではないけど、熱烈的なファンも多い。ただ、顔出ししているところを見たことがないから、どんな人なのかはわからない。

「いや、大学生だよ? でも、最近コラボ配信とかの仕事が入ってくるらしくて、忙しくなってきてるみたい。大学卒業したら、就職か動画クリエイターの事務所に所属するか迷ってるんだって」

クリエイターの事務所……あらためて、私とは違う世界にいる人達だということに気づかされる。


イケメンプロゲーマーのヤマト。
まるでアイドルのようなソウマさん。
そして、コアなファンが多いマンダムさん。
ゴリラアイコンの春菜。


――ば、場違いすぎない!?


ヤマトたちのように比較的若く、ファンが多いプロゲーマーや実況者は「スター世代」とも言われ、テレビで紹介されることも少なくない。

緊張がぶり返してきたとき、ヤマトが口を開いた。
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