eスポーツ!!~恋人も友達もいないぼっちな私と、プロゲーマーで有名配信者の彼~
「あの、さっきの話の続きなんですが……なんでストロベリーを使ってるんですか?」
「それは上位勢に入りたくて……私なりに考えてどのキャラにも対応できると思ったのがストロベリーだったんです。もちろん、見た目も好きですけどね」
ヤマトは私の話を聞いて目を輝かせる。
「周りの情報に左右されず、素敵だと思います! コンボルートとか自分で開拓したの、すぐわかりました。かなりやり込んでるんですよね」
「ヤマト、そんなの当たり前だろ。ヤマトに勝つんだからアタックウォリアーズの前作からやりこんでるに決まってるじゃん」
「私、ゲーム買ったの2ヶ月前ですよ?」
私がそう言うと、2人は口を開けて固まった。
「ハルさん、それ冗談ですよね……?」
ヤマトが引きつった笑顔になっている。
「いえ、本当ですよ。2ヶ月間はずーっと研究と実践ばかりしてましたけど」
そう言い終わる頃、店員さんが飲み物を持ってきてくれた。
私はアイスココアを一口飲む。
「僕、鳥肌立っちゃった。最年少プロゲーマーって呼ばれてるヤマトや、比較的若いスター世代の僕だって小学生の頃からやり込んでるからね。ハルちゃん天性の才能なのかなぁ……?」
……もしかしたら、始めたての初心者に負けたってヤマトやソウマさんの気分を悪くさせたかもしれないって今、気づいた。
「あ、もし気分を悪くさせたらごめんなさい! この2ヶ月、すごく頑張ってプレイしたので……でも、そんな期間ふたりからしたら短いものですよね」
「いや、ハルさん謝らないでください。というか、あの動きは才能だけでできるものじゃない。よっぽど密度の濃い特訓されたんですね……」
「そりゃもう! ヤマトさんの動画はもちろん、トレーニングモードで全キャラのコンボルートを確認して覚えて……一応今日持ってきたんですが、こんな感じでノートに書いてフレーム数覚えて、差し込める技を体で覚えたんです。他にも色々」
今日、もしかして新しい学びがあるかもしれないと、ノートを持ってきていた。
5冊ほどテーブルに出すと、ヤマトとソウマさんはそれをペラペラと捲る。
「すげぇ……ハルちゃん、こんなのプロでもなかなかできないよ」
「ありがとうございます。追いつく……なんておごがましいけど、やれることはやってみました」
「ハルさん、これほんとすごいよ‼ 考察や分析もすごく読んでいて面白い‼」
ヤマトは興奮したのか、私の手をぎゅっと握る。
大きな手が私の手を包む。ヤマトの表情は、まるで大型犬かのように目がキラキラしていた。
突然のことに、私も耳まで熱くなり、ボーっとしてしまう。