一夜限りのはずだったのに実は愛されてました
それからはなんとなく松下さんとの接点がなくなるように2人が配慮してくれて仕事を振ってくれた。
もともと松下さんの仕事の手伝いはあまりしておらず、周りの社員からの指示が多い。それに加え、事務的なことがメインなので接点を持とうと思わない限り元々なかった。
コーヒーを持っていくことが楽しみだったのにそれも最近は真子ちゃんが「ついでに持ってきました」と運んでくれる。そしてそのまま楽しそうに話してくるのが目に入る。
オシャレで明るい真子ちゃんと松下さんなら見た目の釣り合いが取れていると思った。なにより自然体で羨ましかった。

そんな2人を横目に見つめ、寂しくなってしまうがこの姿を見るのもあと少し。
それが嬉しいのか悲しいのかわからなかった。
松下さんが誰かと結婚したとしても彼を見続けていたいのかもしれない。

はぁ……なんだか情けない。
松下さんへの未練がありすぎて、あの幸せな一晩で一生分の思い出になったと思ったのに欲深くなってしまった。
また彼の腕の中に入れたらと何度も考えてしまう。
温もりを思い出しては胸の奥が苦しくなる。

早くお見合いして、結婚して未練を断ち切らなければ。もう後戻りは出来ないんだから。
< 15 / 53 >

この作品をシェア

pagetop