一夜限りのはずだったのに実は愛されてました
「とにかく、私は最後まで楽しくみんなと働きたいの。松下さんに色々言われてしまうけどこれは決まったことだから。だから2人とも最後まで仲良くしてね」

「もちろんだよ。本当は紗夜ちゃんに辞めてほしくない。ファービスにとって大切な人だから。個人的にも大事な友達だから」

「ありがとう」

私はみんなと違ってファービスにとっては替えの利く人材なのにそう言ってもらえて嬉しい。
2人からこうやって言ってもらえるだけで胸が熱くなった。ここで働けて良かったと思った。

「松下さんとギクシャクして働きたくないの。だから協力して」

「わかった」

2人にお見合いのことは真実だけど松下さんのことはちょっと誤解させるような言い方でしか説明できなかった。
まさか私が松下さんと一夜を共にしたとは口が裂けても言えない。
そのせいで松下さんが私を疎ましく思っているのかもしれないなんて。

「でもね、お見合いのこと。本当に後悔がないかよく考えてみてほしいの。何かいい案があるかもしれないし、紗夜ちゃんの人生を後悔してほしくない。いつでも私たちがいるって知っていてほしい」

「ありがとう」

私は2人の言葉に涙がこぼれてしまった。
手で拭うと、やっと笑顔が出た。
2人が味方だっていうだけで心強かった。
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