人助けをしたら人気俳優との同居が始まりました
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「やっぱり、エラーが多いと駄目だよね」
「そうだな。まずは守備でリズムを作らんことにはな」
「せっかくいい投球してるのに、もったいないわね」

 翌朝9時に起きた叶恵がリビングに行くと、数日前に開幕した高校野球を3人で仲良く見ていた。

「……おはよ」
「おはよう。ん? 今日は休みなのに早いな」
「あら、そうね。おはよう、叶恵。朝ごはん食べる?」
「叶恵さん、おはよう」

 やっぱり、昨日のことは夢じゃなかったんだ……。
 朝になったら山内蓮がいなくなっていますように、と願いながら眠りについたのに、どうやら叶わなかったようだ。

「おはようございます。あの、山内さん。今日のことなんですけど」
「叶恵さん、何時に出かける? 10時くらい?」
「蓮くん、昼は駅前の定食屋がオススメだぞ。ボリュームがあって安くてうまいから、12時前に行かないとかなり待つ羽目になるがな」
「そんなにすごいの?」
「行ってごらんなさい。きっとビックリするから。あら? でも今日は祭日だから、お休みじゃないかしら」
「いや。15日を休む代わりに今日は開けると聞いたぞ」

 目が覚めたばかりの叶恵は頭が回らず、3人の会話を黙って聞くばかりだ。

「だったら叶恵さん、お昼はそこに連れてってよ」
「叶恵、とりあえず顔くらい洗っていらっしゃい。起き抜けの状態で俳優さんの前に出てくるなんて信じられないわ。蓮くん、叶恵がごめんなさい」
「絹江さん、謝らないでよ。好きな子の寝起きを見れたんだから、俺はむしろありがとうって言いたい」
「口が上手いな、蓮くんは。俳優さんはみんなそうなのか」
「國吉さん、失礼だね。俺は本心を言っただけだよ」

 どうやったらたった1日でここまで打ち解けられるのだろう。
 3人のあまりの仲の良さとテンポの良い会話に、叶恵は口を挟む余地を見つけられずにいた。
 しかもすでに出かけることが決定事項になっていて、今さらやっぱり行きません、と言い出せる雰囲気はどこにもない。
 叶恵は諦めて、シャワーを浴びることにした。
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