独占欲強めな御曹司は、溢れだす溺愛で政略妻のすべてを落としてみせる
とはいえ、その話とこの話はまったく別の問題だ。響一が既婚者になってしまったことと、結子と奏一が見合いをする話は直接関係がない。
「ていうか、さっきのあれ何? 外面いいのは結構だけど、もうちょっとまともな嘘ついてくれない……?」
「嘘って? ……ああ、俺が結子をずっと好きだったって?」
ため息交じりに呟くと、奏一が驚いたように目を見開いた。それから少し不機嫌な声で疑問を重ねてくる。
「なんで嘘だと思うの?」
「嘘に決まってるでしょ。小さい頃から他の子にはニコニコしてても、私にはいじわるばっかりだもん」
けれどそんな奏一に負けないぐらい、結子もむっとしてしまう。
彼が結子を好きだったという言葉は、絶対に嘘だと断言できる自信がある。結子は奏一にいじわるをされてきた記憶しかない。からかわれて泣かされていたことしか覚えていないほど、奏一は結子の嫌がることや困ることばかりしてきたのだ。それなのに『ずっと好きだった』なんて冗談でも笑えない。
「そりゃ、好きな子はいじめたくなるでしょ」
「……その笑顔がうさんくさい」
「ひどいな」
結子の言葉に奏一が軽い調子で肩を竦める。
ひどくはない。ひどいのは奏一の方だ。
小学生程度ならまだ話はわかるが、大人になっても彼はいじわるだった。だから今回も、響一の結婚を知らしめて結子の悔しがる顔を見るために、わざと大芝居を打ってこの場を用意したのではないかとさえ思ってしまう。