独占欲強めな御曹司は、溢れだす溺愛で政略妻のすべてを落としてみせる

 外見は昔も今も瓜二つだが、彼らの結子への接し方はものの見事に真逆だった。周りの人には『よく見分けられるね』と感心されるが、結子は半径五メートル以内に近付くだけで、それが響一か奏一かを正確に判断できた。

 そしてそんな調子だったから、入谷家から見合いの話が来たと聞かされたとき、相手が響一だと疑いもしなかった。まさかすでに響一が結婚しているとも、奏一が結子と結婚したいと言い出すとも、夢にも思わなかったのだ。

「いつの間に結婚してたの……? 相手だれ……?」
「兄さんの結婚相手? すごいフツーの子だよ。どこかのお嬢様とかじゃないけど、明るくて気が利く優しい子って感じ。俺もその子の店によく通ってる」
「……店に通う……? はぁ!? 待って、まさかキャバ嬢なの!?」
「いやいや、普通にサロンの店員……って、ちょっと待って。それだと俺がキャバ通いしてるみたいじゃん」

 キャバレーにもクラブにも普通に入り浸ってそうだけど……と言ったら流石に怒られるだろうか。

 奏一が口にした『サロン』が何のサロンなのかも、もはやどうでもいい。響一の結婚という言葉はただの幻聴だったかもしれないと淡い期待をしたが、奏一も相手に会ったことがあるのならばもう疑いようがない。

 家族に紹介して、結婚を認められて、婚姻届けも提出しているのなら、結子にはもう手も足も出ない。

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