独占欲強めな御曹司は、溢れだす溺愛で政略妻のすべてを落としてみせる

 投げやりな態度にむっとする反面、これは前途多難だな、と思う。同じ日本語で話しているはずなのに、彼とはたまに会話がかみ合わないというか、感情の向いてる方向性がすれ違っているような気がするのだ。

 やっぱり今からでも考え直すべきかな、とさっそく心を挫かれそうになっていると、奏一が頬杖を解いてテーブルの上に身を乗り出してきた。その顔はもういつものような笑顔に戻っている。

「で、いつから来れる?」
「え? ……来れる?」
「うん、俺んとこに引っ越してくるの」
「!?」

 急にご機嫌になって前のめりな態度を見せる奏一に、思わず目を見開いて言葉を失う。つい今しがた縁談を受け入れる覚悟をしたばかりだと言うのに、話が飛躍しすぎではないだろうか。

 これから結婚の話を具体的に進めると同時に、職場への報告や行政関係の各種手続きを進め、結納と結婚式を済ませた後、一緒に住み始めることになるだろう。

 その間おおよそ半年から一年ほどかと概算していた結子は、急に最終ステップまで飛んできた話題に目玉がぽろりと落ちそうになった。

「結子の職場、佐山の実家より俺のマンションの方が近いよ? 地下鉄一本だし、最寄り駅もマンション出てすぐだし」
「あ、そうなんだ。それは便利……」

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