独占欲強めな御曹司は、溢れだす溺愛で政略妻のすべてを落としてみせる
心の何処かではお世辞だと理解しているが、奏一の言葉を嬉しく思わないわけでない。
不安な気持ちを包み込み、優しい言葉で慰め、丁寧に頬を撫でられると、いつの間にか安心してしまう。上手く丸め込まれていると気付いても、気を許してその温度を心地良いと感じてしまう。
「撫でられるの好き?」
「……ううん、そんなこと、ない」
頬を撫でられる心地よさを感じながらも、口では一応否定する。本当はこのままずっと触れ合っていたいと思っても、奏一の指遣いが気持ちいいと思っていても、照れるとついつい可愛げのない言葉になってしまう。
「そう? 俺、甘えられてるみたいで今すごい嬉しいんだけど」
もしかしたらその感情も見抜かれているのかもしれない。奏一は結子の頬から指を退かすと、そのまま涙の跡にそっと唇を寄せてきた。
頬にキスだなんて、あまりにも可愛い慰め方だ。とうの昔に成人した大人同士にしては、少し幼稚で女々しいと思う。
我ながら初々しい夫婦関係ね……なんて思っていると、肩を抱いていた奏一の腕に突然ぎゅっと力が入った。
「奏一さん……?」
「泣いてる結子に迫るなんて、俺ほんと卑怯だな」
迫る、という言葉に、ぴくっと反応してしまう。おそるおそる顔を上げると、少し困ったような笑顔と視線が合う。
「でも結子を放っておけない。少しでもいいから……つらくて悲しい気持ちを紛らわせてあげたいんだ」