独占欲強めな御曹司は、溢れだす溺愛で政略妻のすべてを落としてみせる

 またそうやって結子を甘やかすようなことを言う。優しい表情と優しい触れ方に『まるで本当に愛されているように』勘違いしてしまう。お互いの両親や会社にとって利用価値があるというだけでは説明がつかない感情に囚われる。

「この前は結子、泣いてたからね。今日はお花のいい匂いでリラックスしてるし、前より気持ち良くなれると思うよ」

 奏一が数日前の話を持ち出すので、う、と言葉に詰まる。彼は結子が泣いていたことに対してどうこう言っているのではないだろう。結子もそこではなく『前より気持ち良く』という部分に反応してしまう。

 前も気持ち良かったでしょ? と言われているみたいで。今夜はそれより気持ちいいよ? と誘われているみたいで。

 何も言えずに口籠っていると、奏一が急ににやりと笑う。昔とはまたちょっとだけ違う、いじわるな視線で。

「まあ、今日も啼いてもらうんだけど」
「ばっ……か!!」

 急に恥ずかしい表現で結子をからかうので、奏一の肩をぽこぽこと叩く。

 しかし抵抗する結子の手首は、彼の大きな手にあっさり掴まってしまう。そのままシーツに腕を押し付けられて微笑まれると、結子はすぐに何も言えなくなってしまった。

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