独占欲強めな御曹司は、溢れだす溺愛で政略妻のすべてを落としてみせる

 そこでふと気がつく。

 今にして思えば、この『頭の固い人』というのは結子本人の事なのかもしれない。

 奏一は意地っ張りな結子を納得させ、その後の準備や手続きを円滑に済ませ、手っ取り早く自分の元に置くために『政略結婚』という状況を作り出したのかもしれない。確かにその方が合理的だったのかもしれない。

 現にあの夜、結子は早々に白旗を振った。父の会社とイリヤホテルグループの利害関係をちらつかされ、文字通りの『政略』という枠に収まることで自分を納得させた。響一への想いを諦めることで、奏一との結婚を受け入れた。

「でも結子の気持ちを無視して婚姻の話を進めたから……俺は罰が当たったんだ」
「罰って……そんな、大袈裟よ。失敗は誰にでもあるんだから」
「違う。今回の失敗は俺の落ち度だ。そうじゃなくて」

 それまで自信満々に語っていた奏一が、急にシュンと静かになる。だから結子は再び首を傾げる。

 確かにきっかけは政略結婚だったかもしれない。最初の結子は嫌々それに応じたかもしれない。

 けれど実際に奏一と共に過ごすようになって、彼の優しさや温かさに触れて、結子は安心感を得た。いつの間にか奏一を好きになった。

 結子は彼の妻として生きていく道を自分で選んだ。だからもうそんなことは気にしなくてもいいのに、奏一はそうは思わないらしい。

「結子に口をきいてもらえなくなった」
「!」
「因果応報だよ。結子の気持ちを無視して強引に結婚の話を進めたから、巡り巡って結子に嫌われたんだ」

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