独占欲強めな御曹司は、溢れだす溺愛で政略妻のすべてを落としてみせる

 奏一の説明に、開いた口が塞がらなくなってしまう。

 政略結婚の経緯と奏一の部下が下衆な行為を働いていたこと、そしてその責任を奏一が取ることには何の関係もない。もちろんそれをきっかけに結子と奏一が気まずくなってしまったのも全くの別問題、一切関係のない話だ。

 しかし奏一はそうは考えていないらしく、政略結婚を無理に進めたことと今回結子に嫌われたことが直結していると感じているらしい。

 否、案外それも当たっているのかもしれない。

 結子が奏一に対して怒った理由は『結子の気持ちを無視したから』だ。それと政略結婚の話は直接は関係がないが、確かに『人の気持ちを無視して物事を進めれば、巡り巡ってその人に嫌われる』という状況にある。

 運命や因果とは本当に不思議なものだ。そう思えば奏一の言い分もあながちはずれではないように思えてくる。

「このままじゃ駄目だって思い知った。このままだと結子は、本当に俺のことを嫌いになる……」

 とはいえ、そもそも結子は奏一のことを嫌いにはなっていない。奏一の態度に少し怒ってしまっただけだ。

 まずはその誤解から解かねばならない……と思う結子は、そこで自分の重大なあやまちに気が付いた。

 気付いた瞬間、ついため息が出てしまった。自分に対しても、響一に対しても。

「奏一さんって頭はいいはずなのに、たまにちょっと抜けてるよね」
「……え」

 言わなくても気付いていると思っていた。奏一は勉強やスポーツに優秀なだけではなく、人間関係でも失敗しない。人の気持ちや考えを読むのも上手く、それをちゃんと活かすことも出来る。

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