恋のチャンスは3日間
「森下」

腕を捕まれて、驚いて振り向くと

「・・・郡司・・・さん?」

なぜか駅に向かって歩いているはずの郡司さんがそこにいた。

私の腕をつかんだまま、アパートのドアを開けて中に入ると、私をドアの方に押し付けた。

「森下、俺のこと好きなの?」

まっすぐに私を見つめる。

コクンと頷き

「す・・き・・です。・・・ずっと・すき・・で・・」

言葉が続かない。
心臓が飛び出しそう。

「ずっとって、いつから?」

「・・・た・ん・・とう・・・」

「担当したとき?って2年も前だろ?」

「・・ん・・」

引いた、かな。
担当が代わってからは、毎日会えたわけじゃない。
話も数えるくらいしか出来なかった。

でも、気持ちは消えなかった。

「森下」

名前を呼ばれても顔をあげることが出来ない。

郡司さんはどう思ったんだろ。
聞くのが怖い。

「森下」

さっきより優しい声。

私の頬を両手で包むと、ゆっくりと顔をあげさせた。

涙で郡司さんがよく見えない。

「そんなに俺のこと、好き?」

「は・い・・・好き・・」

そのとき、私の唇に柔らかい感触が、軽く触れて離れた。

え・・・キ、キス?した?
なんで?

「そっか。・・・そっか」

なにかちょっと嬉しそうな声がして、私は郡司さんに抱き締められた。

なんで?

その答えが郡司さんの口から言葉となって私の耳に届く。

「俺も、好きだよ」

言葉を聞いた瞬間に涙が滝のように流れ落ちる。

「うう、えっっえっ・・・っ」

気持ちがついていなかない。
だけど、目の前にある体温と香り。
優しく包み込んでくれている郡司さんに、しがみつく。

ずっとずっと好きで。
諦めたくても諦められなくて。

抱き締められたらどんなだろうって、いつも想像して。
想像だけで終わって。

それが今、本当に抱き締められてて。
気持ち受け止めてもらえるなんて、思ってなかったから。

しばらくそのまま抱き締めていてくれたけど、郡司さんが口を開く。

「今日は泊まること出来ないけど、終電の時間まで一緒にいるよ」

優しい声が聞こえる。

「・・・はい」

返事をすると、そっと郡司さんが私をはなす。

私の手をとり、靴を脱ぐと手を繋いだまま部屋に入ってソファーに座った。

私を隣に座らせて、自分の胸に私の頭を引き寄せる。
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