無気力な王子様は私への愛を拗らせたヤンデレさんでした。
「僕のためだよ」

「ひなくんの、ため?」

「うん。僕、ひなちゃんが忘れちゃったこと、覚えてたらすごいでしょ?そしたら、また頭をなでなでしてくれるから、思い出さないで」


また、にこっと笑ったひなくん。


「ひなくん、それ、わがままって言うんじゃないの?」

「……え?……っ」

「ひなくんが、言ったから私も言うね」

「だめ」


今度は口を塞がれてしまった私。


「……だめだよ。わがまま言ったら……殴られちゃうからね」

「……?」


殴られる?


「まぁ……キミは、わがままを言う僕のことが大好きって……言ってくれたけど……」


冷たくなった表情が、少し明るくなるようにそう言ったひなくん。


私は口元のひなくんの手を優しく握り、口元から離す。


「僕ね、ずっと悔やんでることがあるんだ」

「……?なぁに?」

「僕、ひなちゃんが天使って言われるほど周りに優しくできなくすればよかった、ってね」

「……?」


私が、天使……?優しい……?できなくする……?


「僕は、悪魔だから、ひなちゃんにあったら周りの人に呪われちゃうんだ。でも、ひなちゃんは天使だから僕に会いにきちゃう」

「ひ、ひなくん……?」

「僕は悪魔なのに、キミが優しくするせいで差し伸べてくれた手に手を重ねる。すると、世界の全てがキラキラして見えるようになった」


……まただ。


「……ひなくんは、悪魔じゃない」

「だから----」

「って言っても無駄だと思うけど、ひなくんも私も人間だよ他のなんでもない、ただの人間」
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