捨てられた聖女のはずが、精霊の森で隣国の王子に求婚されちゃいました。【改稿版】

 それが気に食わなかったようで、忌々しげに顔を歪めた王太子が今度はレオンに剣を振りかざす。

 ーー危ないッ!?

 そう思うと同時、私は、

「イヤーーーーッ!!」

という大きな叫び声を上げていた。

 その刹那、何処からともなく、どす黒い雷雲が湧き起こり、雷鳴が鳴り響く。

 ゴロゴロゴロピッカーーッ!! ズッドーーーーンッ!!

 物凄い轟音に付随するように凄まじい地響きと地鳴りとが轟いた。

 私は異世界に召喚された際に遭遇した地震を想起し、恐怖し、その場で頭を抱えて蹲る。

 そうして気づいた時には、周辺の男らどころか、ルーカスさんの家までが忽然と消え去っていて、さっきまでの雷も嵐も嘘だったかのような静寂に包み込まれていたのだった。

 急に静けさに支配され、どうしたのかと顔を上げ辺りを見渡してみる。

 ーーあれ? 皆はどこ? それに家は?

 もしかして、これも私の能力ってこと?
 もしかして、皆、吹き飛んじゃったの?

 最悪な事態が脳裏を掠め、無自覚とはいえ、自分のやらかしたことに恐怖を覚え、大きなショックを受けていると、いつも陽気なフェアリーとピクシーの賑やかな声が響き渡った。

「ノゾミンったら凄すぎ。もう吃驚しちゃった~!」
「ノゾミ、凄い、すご~い! 一瞬で吹き飛んじゃうなんて、ホント吃驚だよ~!」
「そりゃそうだよ。僕が見初めたノゾミだからね」
「ノゾミ様、さすがでございますじゃ」

 ふたりのその声を皮切りに、どこか誇らしげなレオンの声に、いつになくはしゃいだルーカスさんの声までが加わった。

 ホッと安堵するやら驚くやらで、感情が追いつかない。

 ただただ瞠目したまま、皆がこちらに歩み寄ってくるのを見守ることしかできずにいる。

「一体、何がどうなってるの?」

 無意識に零したその声に、レオンが応えてくれる。

「いや、それがさ、よくわからないんだけど、気づいたらこうなってたんだよ」

 その声に、本当にレオンも皆も無事だったんだ。そう実感し。

 ーー本当によかった。

 心底ホッとした私は感極まって涙を流してしまう。

 そのことにいち早く気づいたレオンが駆け寄ってくるなり、しっかりと包み込むようにして逞しい腕で抱きしめてくれている。

 本当に一瞬のことで、何がどうなったのかよくはわからないけれど、どうやら聖女の能力というものは、その威力もさることながら、当事者にとっては、都合よく働いてくれるものであるらしい。

「でも、あの人たちは?」
「こちらをどうぞ」

 レオンの腕の中で、この幸せを噛みしめていて不意に浮かんだ疑問を口にした私に、すぐ後ろにいたらしいソフィアさんが、あの手鏡を差し出してくれる。

 覗いてみると、精霊の森の奥であるのだろう見るからに不気味な場所で、ゴブリンや魔物に追われ逃げ惑う王太子と男たちの姿が映し出されて数秒後、まるで電波が遮断されたかのように画像がフッと途絶えてしまった。

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