振られた私を御曹司が拾ってくれました。
桐生さんが、カフェから去った後、私はその場から動けず、暫く固まったように座っていた。
すると、私の携帯が光り、駿からの着信を知らせた。
心臓がドクンと大きく鳴る。
恐るおそる電話に応答する。
「…はい。」
「あっ…琴音、…悪いけど、今日は仕事の付き合いで、帰れないかも知れないんだ、だから気にせず先に寝ていてくれ。」
「…はい。駿…あの…」
「…ん?なに?」
「…やっぱり、何でもありません。お仕事頑張ってください。」
駿は嘘を言っている。
なぜ、本当のことを言ってくれないのだろう。今日は、あの人と一緒にいるはずなのに、仕事だと嘘を言うなんて、なんだかとても寂しい気持ちになる。
(…なんで私に嘘をつくの…)
私はマンションに到着すると、すぐに自分の部屋へと移動した。
そして、なぜかベッドにうつ伏せに勢いよく飛び込んでみる。
(…私はここに居て良いの?駿はなんで私に、ここへ住めと言ったの…)