【書籍化&コミカライズ】離縁前提の結婚ですが、冷徹上司に甘く不埒に愛でられています(離婚予定の結婚なのに〜)
「――まぁ、桜はゼネマネが赴任してきても痛くも痒くもないどころか、嬉しくて仕方ないわよねぇ……」

 ――ゔっ!

 生暖かい視線から逃れるように手元の仕事を片付けていると、心の内を読んだ友子は、背後から私の肩を意味深にツンツンしながらニヤニヤ。

 坪井さんもクスクス笑いながら、いつものように加わる。

「真面目で一途なのは、國井ちゃんのいいところだよ」

「何考えているのかわからない『秘書室の悪魔』のどこがいいのか、私にはちっともわからないけどね」

「まぁ、能天気で駆け引きができなそうな國井ちゃんには、手に負えなそうな相手ではあるよね〜」

「ふふふ、ほんとに」

 こうして言いたい放題言われるのは、いつものこと。

 だけど、今日はまぁ……仕方ない。

 いじり倒して楽しそうなふたりに、そろそろジロリと視線を送る。

「もう、ふたりとも。その話は終わり――」

 真っ赤な顔で声を上げた――そのとき。
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