【書籍化&コミカライズ】離縁前提の結婚ですが、冷徹上司に甘く不埒に愛でられています(離婚予定の結婚なのに〜)

「ハーイっ、みんな揃ってるかしらーー」

 声を張り上げながら秘書室に入ってきたのは秘書室長――英子さん。
 そんな女性室長に続いて、もうひとり。ダークスーツに身を包んだ、すらりとした長身の男性が秘書室に入ってきた。

 その瞬間、さっきまで緩んでいた秘書室内の空気がピリッと嘘のように張りつめ、水を打ったように静まり返る。

 え……。

 このときばかりは周囲はもちろん、さすがの私も予期せぬ出来事に固まった。

「――ずいぶんと、ここの秘書室は暇人が揃っているようですね。……英子室長」

 背中が凍えそうなほど、冷ややかな低い声。

『室長』に向けて降った割には、セルフレーム眼鏡の奥の涼やかな瞳は、私たち秘書たちを見下ろしている。

 久しぶりに見るその姿から、一気に目が離せない。
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