秘書室の悪魔とお見合いをしたら〜クールな秘書と偽装結婚することになり、いつの間にか愛でられていました〜
あのあと、桜さんを探すきっかけとなった室長と、慌ただしそうな幹事の坪井、そして役員一部に断りを入れ、好奇の視線を浴びながら彼女を抱いたままラウンジを後にした。
念のため周囲を見回したが、クリスの姿はなかった。
もちろん無粋なマネはせずにそのまま帰ってきた。
明るく振舞っていたが……あれは本心ではないだろうから。
それもこれもお節介老人が、俺の聞こえる所で……それも、俺が業務中に私情を一切挟まないことを知りながら、あんなことをクリスに言うから……。
『――國井さんに恋人?』
『うん! 彼女、やっぱり僕が探していた人だったんだ!』
『ううむ、なるほど……恋人という存在はいないが……それよりも手強いのがいるかもしれないのぉ……。だが……積年の思いくらい伝えたらよかろう。歓迎会もあるのだから』