秘書室の悪魔とお見合いをしたら〜クールな秘書と偽装結婚することになり、いつの間にか愛でられていました〜
仕事人間と言われてきた彼が、業務中にここまで感情をあらわにした理由。
そんなの、期待せずにはいられなくて、
なにより、彼の一挙一動すべてから伝わってくるような気がして、
こみ上げて来る感情を、抑えきれない。
お腹のそこから、大きなパワーが湧いてくるのを感じた。
「“問題の報告”も、そのときに聞かせてもらいましょうか――」
智秋さんは、夢見心地な私を見てふわりと目元を緩めると、上司の顔へと切り替え腕時計に視線を落とす。
「――戻りましょう」
「あ、ちょっと……」
逃げるように先を行ってしまった智秋さんのあとを、慌てて追いかける私。
ふと、彼が出口付近で本棚の奥の方を見たような気がしたけれど、そのまま二人一緒に持ち場へと戻った。
頭がふわふわして、しばらくドキドキが止まらなかった。
もしかしたら、私の勘違いかもしれない。
でも、私には――これ以上ない、自分を動かすための大きな原動力となった。
そんな私たちのあとから、もうひとり。
図書室をあとにする影がいたなんて――このときの私は考えもしなかった。