魔法の使い方2 恋のライバル、現る!?
 ヴィオルドは後輩やミーナに対してぶつくさと文句を言いながらも、今の生活に満足していた。この「なんでもない日々」が愛しい。

 そしてふと、自分がここにいて良いのか不安になってしまう。かつて自分の犯した罪が未だにまとわりついて悪夢となる。この楽しげな彼らの中で、自分だけが冷たい暗闇にいるのだ。それを決して忘れてはならない。

「どうしたの、ヴィオ」
「えっ、俺なんかしたか?」

 ミーナから発せられた突然の問いかけに、慌ててヴィオルドは彼女に意識を向けた。

 彼の暗赤色の瞳には、影が落ちている。彼の暗い表情にいち早く気づいたミーナの声音から、心配していることが伺える。

 急に現実に引き戻されたヴィオルドがとっさに返した言葉は、実に頓珍漢(とんちんかん)なもの。

「いいえ、何でもないならいいの。どーせロクでもないことでも考えてたんでしょ?」
「どうやったら後輩が素直に言うことを聞くかとかな」

 ヴィオルドはいつも通りの憎たらしい口調でミーナの言葉に続けた。彼女は納得いかない表情をしていたが、追及することはなかった。お互い何もなかったように、再びコーヒーカップに手を掛けた。

 そのやり取りでヴィオルドの異変に気づいたフィルも、心配の眼差(まなざ)しで真っ直ぐ彼を見ている。

 彼女の手は止まっている。しかし誰も気づかず、談笑は再開された。
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