魔法の使い方2 恋のライバル、現る!?
「気にするな。お互い様だ」

 ヴィオルドはミーナの反応に困惑していた。自分が人殺しだと説明したのに、罵ることなく謝罪を始めた。それも決して殺人に恐れたからではない。

「それとね、私ひとつ気になったことがあるの」
「……なんでも答える」

 どんなことにも正直に答えようと心を決める。たとえ自分に都合が悪い質問であったとしても。

「ユリウスさんって何者? あの人の紹介で衛兵になれたの?」
「……あ、あぁ、ユリウスさんは昔、王宮で執務官として働いてたんだ」

 ヴィオルドは予想の斜め上をいく質問に拍子抜けしながら答える。さっきの決心は無駄に終わってしまった。

 執務官。王宮での事務仕事をする人のことである。国王に宛てられた手紙や政治の書類を管理したり、書類を作成したりすることを主に仕事としている。重要な書類を扱うので、誰でもなれるわけではなく、王宮での地位も政治をする政務官並みに高い。

「――けど、派閥での権力争いに嫌気がさして辞めたんだってさ」
「ユリウスさんってすごい人だったんだ……。確かに品あるとは感じてたけど」

 ヴィオルドの回答に納得しながらもまだ実感のないミーナ。

「さて、じゃあ私ユリウスさんの店に戻ろうかな」
「お、おう」

 ヴィオルドに関する質問はせずにミーナは去ろうとする。ヴィオルドは完全にペースを乱されていた。

「あ、そうそう、たぶん過去に関する悪夢にでも悩まされてるんでしょ? 夢はただの夢だけど、困ってるなら悪夢除けの魔法薬を調合してあげる!」

 ミーナは笑顔でヴィオルドに申し出るが、彼は他の人と同じようにはね除けようとする。

「いや、大丈夫だ。もう俺に構う必要は――」
「えーせっかくいい練習台……じゃなかった、調合の練習になると思ったのにな」
「何がなんでも大丈夫だからやめろ。しかも言い換えれてないぞ」

 しかしその後の彼女の言葉につい反応してしまう。散々ペースを乱されているので、今さら建て直せない。

「とにかく、仕事終わったら店に来てね! 絶対よ! 私は帰りに薬草買っておかなきゃ!」

 ミーナは練習台の発見に目を輝かせながらまくし立てると、ヴィオルドに反論の隙を与えず、風のように走り去ってしまった。
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