魔法の使い方2 恋のライバル、現る!?
 その夜、ミーナはあまり眠れなかった。

 翌朝に重いまぶたをこすりながらベッドから起き上り、支度を整えて下へ行く。警備隊の制服を着たヴィオルドが朝食を取っていた。ユリウスが開店準備をしながら、彼女の朝食を料理している。

 窓からは白金の朝日がさしこみ、昨日の夜などどこかへ消えてしまったよう。彼女は二人に心の内を悟られないよう快活に「おはよう」と挨拶を交わし、ヴィオルドのいるテーブルについた。

「よく眠れた? 私が直々に調合してあげた薬の効き目はどうだったかしら?」
「お前にしてはマトモだと思うぜ。ああ失礼、ミーナだって成長くらいするか。いやあ、誰でも成長はするはずなのに俺としたことがうっかり忘れてたよ」

 ミーナはわざとらしく威張った表情でヴィオルドに尋ねる。ヴィオルドもわざとらしい態度をとって答えた。

 ミーナは敢えて機嫌を悪くした表情を作る。いつも通りのやり取りができたことにこっそり安心している。

「余計な一言が多いのよ。なくなったらまた来なさい。たぶん二週間はもつと思う」
「はいよ。――さて、そろそろ行くか。ユリウスさん、ありがとう。いい気分転換になった。また泊まりに来ていいか?」

 仕事場へ戻る準備をしながらヴィオルドはユリウスに尋ねた。ユリウスはムスッとしたミーナの方を見て返事をする。

「そこの看板娘のお許しがでればね」
「ヴィオの方が先にここの住人やってたみたいだし、私が禁止する権利はないわ」

 ミーナは仕方なさそうに答えてはいるが、それ程嫌ではなかった。彼女にはこうやって憎まれ口をたたき合うのが不思議と楽しく感じていた。結構前から楽しんでいたのかもしれない。一人で考え込んでいるより、ヴィオルドと言いたい放題やっている方が気が楽だった。

 ――そうか、だから私はあいつのこと。

 彼女はそこまで考えて、支度が終わったヴィオルドを見送るために顔を上げた。ガラス貼りのドアから漏れる光が、ヴィオルドをくっきりと映し出す。

 「行ってきます」とドアに吊されたベルを鳴らしながら外へ出る彼に、ミーナとユリウスは笑顔で元気よく「行ってらっしゃい」と応えた。
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