現実主義者の恋愛事情・王子を一時預かりします  レイと綺麗

帰宅して、
手早く鍋の下ごしらえを始めるが、
予想通り、王子の包丁使いは
(つたな)いものだった。

「包丁はね。こうやって持って。
こっちの手は猫の手にする」

綺麗は王子の手を取って、
白菜の切り方を教えた。
「白菜と鶏肉はそぎ切りでね」

「すごい!キレイさん、
シェフみたいにうまい」
何をやっても王子は絶賛してくれるので、
綺麗はちょっといい気分になっていた。

鍋がぐつぐつ煮えて、
ご飯は米がつやつやでいい感じに
炊けている。

リビングのテーブルに並べると
「いただきます」
王子は頭を下げた。

「取り箸、用意しましょうか?」
綺麗が配慮したが、
「取り箸ってなんですか?」
逆に質問された。

「あの、自分のお箸をつっこむと、
嫌だと思う人がいるから、
そういう時に、
別のお箸を用意するのね。

仲がいい友達とか、家族は
そんな面倒くさい事しないけど」

「キレイさんとは・・
家族がいいです」
王子がほほを赤くして答えた。

「うん、いっぱい食べてね」

綺麗はその様子を見て、
<カワイイな>と思ってしまった。
温かくておいしい物を食べると、
人は幸せになるのだ。

「布団の敷き方、教えるし、
お風呂はシャワーでいいかな」

「はい、それから料理は絶対に
覚えたいです。
ボーイスカウトのキャンプでしか
やったことないから」
< 23 / 45 >

この作品をシェア

pagetop