現実主義者の恋愛事情・王子を一時預かりします レイと綺麗
綺麗は少し首を横に傾けて、
ニカッと笑って言った。
「さよなら」
王子は唇を一瞬かんだが、
「また、連絡します」
それを聞いて、高梨が
「はは、こいつは英語もフランス語もだめですから、無理っすね」
「まったくその通り
読めないし、書けないし、しゃべれないし」
綺麗も笑いながら言った。
「さよなら」
綺麗は深々と頭を下げた。
バタン
ドアの音がするまで、頭を下げていた。
涙がぽつん、ぽつんと床に落ちる。
そして、気が付いた。
王子の欲しかったもの。
愛しい人・・
あの猫だけが、家族だったのだろう。
18年間、いつもそばにいて、
つらい時も、悲しい時も寄り添ってくれた。
温かくて、フワフワで、柔らかい・・・
綺麗は部屋を見回した。
自分の部屋がいつもより大きく、
冷たく感じる。
もう、こたつは片づけよう。
こたつ板に手をかけた時だった。
いきなり心に
黒いインクの染みのように、
不安が広がった。
「・・・・・・!」
焦ってバックからスマホを取り出して、
生理の管理スケジュールアプリを開いた。