極秘出産でしたが、宿敵御曹司は愛したがりの溺甘旦那様でした
 衛士の車は、茉奈のためにチャイルドシートが先に設置されていた。当初は私の車で行こうと話したのだが、いずれは必要になるし、用意しておくと彼が言ったので任せておいた。

 こういうところは本当に卒がない。さらに私の車につけているものより、いい代物もなのでちょっと悔しくなる。

 茉奈を後部座席に設置されているチャイルドシートに乗せると、いつもと席も車も違うので、きょろきょろと辺りを見回しているがすんなりと体を預けた。

 続けて茉奈の隣に座ろうかと思ったが、茉奈は車に乗ると比較的おとなしく、窓の外を眺めたり眠ったりするので変に興奮させないためにも、私はいつものように前の席にしたほうがいいのかもしれない。

 助手席に座って、改めて運転席に座る衛士を見つめる。すると不意に彼と目が合った。

「な、なに?」

「いや、なんだか不思議な気分だな。未亜がこうしてまた助手席に座って、うしろには娘までいるんだから」

 衛士も同じ気持ちでいたんだ。もしも茉奈がいなかったら私は衛士との結婚を突っぱねていたのかな?

 そもそも彼があそこまで結婚に必死になっていなかったかも。そこである考えがよぎる。

「衛士は……」

 勢いに任せ口にしようとしたものの私は言い淀んだ。

「どうした?」

 案の定、隣から不思議そうに問いかけられる。けれど私は小さくかぶりを振った。

「ごめん。なんでもない。 気にしないで」

 そのまま窓の外に視線を向ける。誤魔化したつもりはないが、素直に聞けなかった。

 衛士は他の女性と結婚する予定だったんじゃないの?

 車が信号で停止し、頭に温もりを感じる。反射的に衛士の方を見ると、彼は私の頭に手を伸ばしたまま軽く微笑んだ。続けてちらりと茉奈の方に意識を向ける。
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