ボレロ
見間違えか・・・」一度パレットに目をやってから、再び海岸線に目をやると
黄色い服を着た人影が見えた。その人影は、大きなS字を書きながら僕の方へ近づいて来ていた。近づくに従って、その人物が特定出来るようになると、それは恐らく、小学校の低学年位の女の子の様であった。
「こんな時期、一人で海岸で遊んでいるのか?」一寸不思議に思いながらも、その子が辿る砂浜に残す足跡が気になって、キャンパスの上に軌跡を描き始めていた。ふと気づくと、その女の子が僕の側にいた。
「お兄ちゃんて、画家さん?」僕と、僕の絵を見上げる様にして訊いてきた。
「うん、一応、売れない画家だけど」そんな返事を返すと、ふふと笑ってから
「そのうち売れてくるよ。」
「え、ホント・・・嬉しいな、そうなったら。」せっかくの子供の気遣いを無碍にする事もないかと思って、そんな答えを返していた。
「何処からきたの、お父さんかお母さんは?」
「今は、彼処に泊まってる、お婆ちゃんと。」そう言って指さしたのは近くのリゾートホテルで、テラスが在る五階立てのビルの他に、幾つかのコテージを持った結構高級なホテルだった。
「ひとりで、出かけてきたの?お婆ちゃん心配してないかな?」
「うんん、大丈夫、何時も見てるから。」
「ふん、見てる、何処から?」
「それは内緒。」
要領を得ない回答に、僕は非常用の携帯でも持たせてあるのかと推測して一人で納得していた。その子は暫く僕の周りで遊んでいたので、なんとなくスケッチさせてもらった。そのお礼と言っては些細な事だったが、その一枚を小さなレディーに渡した。
「やっぱり、お兄ちゃん上手よ。きっと有名な画家さんになるわ。」お茶目ぽくその絵を褒めてから、僕の横に座りこむと何やら考え事でもしているのか、静かに海を見ていた。
「のど乾かない?ジュースは無いけど麦茶ならあるよ。」
「ええ、頂きます。」そう言うと、僕の差し出した麦茶を美味しそうに飲んでくれた。
黄色い服を着た人影が見えた。その人影は、大きなS字を書きながら僕の方へ近づいて来ていた。近づくに従って、その人物が特定出来るようになると、それは恐らく、小学校の低学年位の女の子の様であった。
「こんな時期、一人で海岸で遊んでいるのか?」一寸不思議に思いながらも、その子が辿る砂浜に残す足跡が気になって、キャンパスの上に軌跡を描き始めていた。ふと気づくと、その女の子が僕の側にいた。
「お兄ちゃんて、画家さん?」僕と、僕の絵を見上げる様にして訊いてきた。
「うん、一応、売れない画家だけど」そんな返事を返すと、ふふと笑ってから
「そのうち売れてくるよ。」
「え、ホント・・・嬉しいな、そうなったら。」せっかくの子供の気遣いを無碍にする事もないかと思って、そんな答えを返していた。
「何処からきたの、お父さんかお母さんは?」
「今は、彼処に泊まってる、お婆ちゃんと。」そう言って指さしたのは近くのリゾートホテルで、テラスが在る五階立てのビルの他に、幾つかのコテージを持った結構高級なホテルだった。
「ひとりで、出かけてきたの?お婆ちゃん心配してないかな?」
「うんん、大丈夫、何時も見てるから。」
「ふん、見てる、何処から?」
「それは内緒。」
要領を得ない回答に、僕は非常用の携帯でも持たせてあるのかと推測して一人で納得していた。その子は暫く僕の周りで遊んでいたので、なんとなくスケッチさせてもらった。そのお礼と言っては些細な事だったが、その一枚を小さなレディーに渡した。
「やっぱり、お兄ちゃん上手よ。きっと有名な画家さんになるわ。」お茶目ぽくその絵を褒めてから、僕の横に座りこむと何やら考え事でもしているのか、静かに海を見ていた。
「のど乾かない?ジュースは無いけど麦茶ならあるよ。」
「ええ、頂きます。」そう言うと、僕の差し出した麦茶を美味しそうに飲んでくれた。