ボレロ
久しぶりに、母のマンションを訪ねると、玄関に見慣れ無い小さな靴が置いてあった。
「誰だろう。こんな靴を履く小さな子の親戚とか居たかな」と思いながら、居間へ行くと、税務署の査察官の様な黒のスーツを着た、女性がソファーニに座っていた。恐らくそれなりのファッションで着飾れば、かなりの美人の部類に入るだろうその女性に僕は軽く会釈して、
「この家の息子です。どちらかと言えば放蕩息子の方ですが。」その女性は、僕の応答が面白かったのかくすりと笑みをこぼして
「沙耶と申します。今日はお嬢様のお供でおじゃまさせて頂いております。」
ふん何処かで聞いた名前だなと思っていると、母に連れられて、見覚えのある少女が現れた。
「やっぱり、ケーキを買ってきたでしょ。だから紅茶が正解でした。」
その少女は、テーブルに紅茶を置くと、
「お兄ちゃんの家に行けなくてご免ね。あの後お婆ちゃんに急な用事が出来て、
あのホテルを出ちゃったの。」
そう、その少女は、半月ほど前に海岸で出くわした少女だった。
「何で、お嬢ちゃんが、僕の母の家に居るのかな?」事態が把握できない僕の質問に母が
「あんたが、ちっとも顔出さないから、再婚したのよ。この子は相手の連れ子よ。」そう言った言葉に、沙耶と言う女性がまたくすりと笑った。
「うん、その冗談はあまり面白くないね。僕とこの小さなレディーは既に顔見知りだし。」
「ほう、じゃあこの子はだあーれ?」
「・・・・」
「ほら、分からないじゃない。」
「まあ、そんなに虐めないで種明かししてよ。」母は少し勝ち誇った表情で
「梢姉さんの息子さんの娘さん。あなたの従兄弟違い、従姪じゅうてつて言うのよ。ああ、めんどくさい呼び名ね。彩あやちゃんよ。あなた、かんな婆ちゃん覚えていない?」
「かんな婆ちゃん?」
「まったく、小さい時から叔父さんの所に入り浸りで、ちっとも母方の親戚何かに顔見せ無いから・・・」
「梢叔母さんの事は少しは覚えてるけど・・・」
「ああ、もう良いわ。紅茶が冷めちゃうから。」そう言うと僕の買ってきたケーキを無造作に開けてから
「ほお、薫にしては気の利いた店で買ってきたじゃない。此所のは美味しいのよ。」
「それ位知ってるよ。叔父さんに良く連れてってもらったから。」
母は呆れた様な顔をして、僕のケーキをみんなに取り分けてから、
「あなた達、伊豆で逢ったんだって。」
「うん、アトリエの近くの海岸だけど。」
「その後、お兄ちゃんのお家に遊びに行く予定だったんだけど・・・」
「それなら丁度良いじゃない。ここで逢えて。」
母は一人で話しを完結させてから、この二人、かんなぎの孫とその守り女の話を長々と話し始めていた。
「誰だろう。こんな靴を履く小さな子の親戚とか居たかな」と思いながら、居間へ行くと、税務署の査察官の様な黒のスーツを着た、女性がソファーニに座っていた。恐らくそれなりのファッションで着飾れば、かなりの美人の部類に入るだろうその女性に僕は軽く会釈して、
「この家の息子です。どちらかと言えば放蕩息子の方ですが。」その女性は、僕の応答が面白かったのかくすりと笑みをこぼして
「沙耶と申します。今日はお嬢様のお供でおじゃまさせて頂いております。」
ふん何処かで聞いた名前だなと思っていると、母に連れられて、見覚えのある少女が現れた。
「やっぱり、ケーキを買ってきたでしょ。だから紅茶が正解でした。」
その少女は、テーブルに紅茶を置くと、
「お兄ちゃんの家に行けなくてご免ね。あの後お婆ちゃんに急な用事が出来て、
あのホテルを出ちゃったの。」
そう、その少女は、半月ほど前に海岸で出くわした少女だった。
「何で、お嬢ちゃんが、僕の母の家に居るのかな?」事態が把握できない僕の質問に母が
「あんたが、ちっとも顔出さないから、再婚したのよ。この子は相手の連れ子よ。」そう言った言葉に、沙耶と言う女性がまたくすりと笑った。
「うん、その冗談はあまり面白くないね。僕とこの小さなレディーは既に顔見知りだし。」
「ほう、じゃあこの子はだあーれ?」
「・・・・」
「ほら、分からないじゃない。」
「まあ、そんなに虐めないで種明かししてよ。」母は少し勝ち誇った表情で
「梢姉さんの息子さんの娘さん。あなたの従兄弟違い、従姪じゅうてつて言うのよ。ああ、めんどくさい呼び名ね。彩あやちゃんよ。あなた、かんな婆ちゃん覚えていない?」
「かんな婆ちゃん?」
「まったく、小さい時から叔父さんの所に入り浸りで、ちっとも母方の親戚何かに顔見せ無いから・・・」
「梢叔母さんの事は少しは覚えてるけど・・・」
「ああ、もう良いわ。紅茶が冷めちゃうから。」そう言うと僕の買ってきたケーキを無造作に開けてから
「ほお、薫にしては気の利いた店で買ってきたじゃない。此所のは美味しいのよ。」
「それ位知ってるよ。叔父さんに良く連れてってもらったから。」
母は呆れた様な顔をして、僕のケーキをみんなに取り分けてから、
「あなた達、伊豆で逢ったんだって。」
「うん、アトリエの近くの海岸だけど。」
「その後、お兄ちゃんのお家に遊びに行く予定だったんだけど・・・」
「それなら丁度良いじゃない。ここで逢えて。」
母は一人で話しを完結させてから、この二人、かんなぎの孫とその守り女の話を長々と話し始めていた。