あやかし戦記 怪物の城
チェルシー・モールバラも心配そうに言い、彼を心配する何人もの人間が同意して頷く。イヅナもその一人だ。ハンデのある人間を命の危険に晒すような真似はしたくない。

だが、ギルベルトは「誰が何と言おうと、僕の意志は変わらないよ」と笑みを浮かべる。そして自身の持つ武器である剣にそっと触れた。

「僕は、確かに怪我をする前に比べれば実力は落ちていると思う。でも決してみんなの足を引っ張るような真似はしない。最後の戦いだ。僕だって、戦いたいんだよ。……いつも、怪我をして帰ってくる団員たちを見て、自分が代わりになれたらって思っていた。今も怪我に苦しんでいる団員たちは大勢いる。僕はその人たちの代わりだ」

「ギルベルトさん……」

ギルベルトの部下たちは目を見開き、驚く。中には瞳を潤ませている者までいた。イヅナの胸も何故かギュッと締め付けられる。

「明日は長い一日になる。だから、今日はもうゆっくり休もう」
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