転生うさぎ獣人ですが、天敵ライオン王子の溺愛はお断りします!~肉食系王太子にいろんな意味で食べられそうです~
プロローグ
私の世界はとても狭い。いつも同じ柵の中だ。
 毎日知らない人たちがやって来て一緒に遊んではくれるけど、すぐにどこかへ行ってしまう。だけど、ひとりだけ毎日私と遊んでくれる人がいた。
「今日もいい子だね」
 そう言って、大きな手で身体を優しく撫でてくれるのは私のお世話をしてくれる人。周りから〝飼育員さん〟と呼ばれるこの人が私は大好きだった。私みたいに全身に毛は生えてないし、耳も全然違う形。尻尾はどこにも見当たらない。全然違う姿をしている飼育員さんに――うさぎの私は恋をしていた。
 ある日、いつも閉まったままの柵の扉が開いていた。馬鹿な私は、なにも知らずに外に出たいって気持ちだけで扉をくぐってしまった。知らないうちに見たことのない場所に来ていて、後ろから怖い唸り声が聞こえ始めた。
 振り向くと、とても大きな身体をしたなにかが私をじっと見つめている。キラキラ輝く大きな鬣を判別したとき、私はそのなにかの正体に気づいた。そして、そのときにはもう遅かった。あれは、私たちを食べる動物……動物の中で王と呼ばれるライオンだ。
 ……逃げないと! でも、どうやって!?
 頑丈な檻からは逃げられそうもなく、そのままじりじりと追い詰められていく。ライオンは私をご飯と思っているのだろう。絶対逃さないと、オレンジがかった金色の瞳が言っている。大きな鼻はヒクヒク動き、口を開けば凶暴な牙が剥き出しになる。
 ――食べられちゃう!
 ライオンが目の前まで迫ったその瞬間、私はあまりの恐怖に瞳を固く閉じた。
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