義兄の純愛~初めての恋もカラダも、エリート弁護士に教えられました~

 母の中ではすっかり結婚が決まっているらしい。私は気が重くなるばかりで、正直もう耳栓をしてしまいたいのだが。

 食欲も削がれて、広いテーブルの上にこぢんまりと並ぶ和食が一向に減っていかない。


「そういえば、六花はまだ結婚式に出たことなかったわよね。パーティードレス買わないと。大人っぽく黒とかにしてみる? いや、やっぱり女の子らしくピンク系かしら」
「なんでもいいよ……」


 煮物を口に運んで、ため息交じりに答えた。さすがの母も様子がおかしいと気づいたらしく、「なんか元気ないわね」と私をじっと見つめてくる。


「なんでもいいじゃ選び甲斐がないじゃない。聖くんに可愛い姿を見てもらいたいでしょう?」
「別に……聖さんはたぶん、私がモンペ履いてても可愛いって言うし」
「あら、のろけちゃって」


 能天気な母にじとっとした視線を向け、「そういうんじゃない」と否定する。


「私がどんな格好をしてたって、奥様が隣にいれば目に入らないよ。あんな綺麗でカッコいい人に、私なんかが敵うわけない」


 正装をして教会に立つ美男美女のふたりを想像し、幾度となくため息をついた。
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