義兄の純愛~初めての恋もカラダも、エリート弁護士に教えられました~

 なにげなく口にした直後、鏡に映る聖さんが心なしか表情が強張っているような気がした。

 どうしたんだろうとわずかな引っかかりを覚え、鏡越しに見つめていると、私の視線に気づいた彼はすぐにまた口角を上げる。


「お化け屋敷は?」
「あ」


 それもあったわ、とまぬけな顔をする私に、彼はクスクスと笑った。たわいない会話にもふたりの歴史みたいなものを感じて、些細な幸せに包まれる。


「いろんなこと覚えてくれてるんだね。本当にありがとう」


 鏡越しではなくしっかり向き直って、プレゼントのお礼を改めて口にした。胸に秘めた恋心と一緒に、このピアスもずっと大切にしよう。

 聖さんを見上げて微笑むと、合わせた瞳に優しくも熱っぽい色が帯びる。ふいに彼の手が再びこちらに伸びてきて、揺れる雪の結晶と、私の頬にそっと触れた。


「……早く一緒に暮らしたくなってきた」


 頬に手を添え、見つめられながら吐息交じりに呟かれては、否応なくドキッとしてしまう。
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