別れを選びましたが、赤ちゃんを宿した私を一途な救急医は深愛で絡めとる
優秀なドクターがそろっていると評判で、この地域の人たちの駆け込み寺のようになっている。


盗み聞きしていたように思われたらどうしよう。

あのときは結構大きな声で病院について話をしていたので、聞こえてしまっただけなのだけど。


「あぁ、堀田(ほった)ですね。アイツ、声大きくて」


そうだ。もうひとりは堀田さんだ。


「そうです。その方といらっしゃったときに聞こえてしまいました。ごめんなさい」

「なんで謝るんですか?別に隠してるわけじゃないし。野上で医師をしています」

「お医者さま?」


事務かなにかの仕事だと勝手に思っていたのでびっくりだ。


「見えないでしょう?」
「そんなことないです」
「白衣脱ぐとね、威厳がまったくない」


彼は自虐的に言うが、白衣を着ていないのでお医者さまだと思わなかっただけだ。

でもよく考えたら、弁当を買うのに白衣では来ないか。


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